ハバクク書(1章~3章)A35



第1章


ハバ 1:1

 預言者ハバククが見た神の託宣。

ハバ 1:2

 主よ、わたしが呼んでいるのに、いつまであなたは聞きいれて下さらないのか。わたしはあなたに「暴虐がある」と訴えたが、あなたは助けて下さらないのか。

ハバ 1:3

 あなたは何ゆえ、わたしによこしまを見せ、何ゆえ、わたしに災を見せられるのか。略奪と暴虐がわたしの前にあり、また論争があり、闘争も起っている。

ハバ 1:4

 それゆえ、律法はゆるみ、公義は行われず、悪人は義人を囲み、公義は曲げて行われている。

ハバ 1:5

 諸国民のうちを望み見て、驚け、そして怪しめ。わたしはあなたがたの日に一つの事をする。人がこの事を知らせても、あなたがたはとうてい信じまい。

ハバ 1:6

 見よ、わたしはカルデヤびとを興す。これはたけく、激しい国民であって、地を縦横に行きめぐり、自分たちのものでないすみかを奪う。

ハバ 1:7

 これはきびしく、恐ろしく、そのさばきと威厳とは彼ら自身から出る。

ハバ 1:8

 その馬はひょうよりも速く、夜のおおかみよりも荒い。その騎兵は威勢よく進む。すなわち、その騎兵は遠い所から来る。彼らは物を食おうと急ぐわしのように飛ぶ。

ハバ 1:9

 彼らはみな暴虐のために来る。彼らを恐れる恐れが彼らの前を行く。彼らはとりこを砂のように集める。

ハバ 1:10

 彼らは王たちを侮り、つかさたちをあざける。彼らはすべての城をあざ笑い、土を積み上げてこれを奪う。

ハバ 1:11

 こうして、彼らは風のようになぎ倒して行き過ぎる。彼らは罪深い者で、おのれの力を神となす。

ハバ 1:12

 わが神、主、わが聖者よ。あなたは永遠からいますかたではありませんか。わたしたちは死んではならない。主よ、あなたは彼らをさばきのために備えられた。岩よ、あなたは彼らを懲らしめのために立てられた。

ハバ 1:13

 あなたは目が清く、悪を見られない者、また不義を見られない者であるのに、何ゆえ不真実な者に目をとめていられるのですか。悪しき者が自分よりも正しい者を、のみ食らうのに、何ゆえ黙っていられるのですか。

ハバ 1:14

 あなたは人を海の魚のようにし、治める者のない這う虫のようにされる。

ハバ 1:15

 彼はつり針でこれをことごとくつり上げ、網でこれを捕え、引き網でこれを集め、こうして彼は喜び楽しむ。

ハバ 1:16

 それゆえ、彼はその網に犠牲をささげ、その引き網に香をたく。これによって彼はぜいたくに暮し、その食物も豊かになるからである。

ハバ 1:17

 それで、彼はいつまでもその網の獲物を取り入れて、無情にも諸国民を殺すのであろうか。


第2章


ハバ 2:1

 わたしはわたしの見張所に立ち、物見やぐらに身を置き、望み見て、彼がわたしになんと語られるかを見、またわたしの訴えについて/わたし自らなんと答えたらよかろうかを見よう。

ハバ 2:2

 主はわたしに答えて言われた、「この幻を書き、これを板の上に明らかにしるし、走りながらも、これを読みうるようにせよ。

ハバ 2:3

 この幻はなお定められたときを待ち、終りをさして急いでいる。それは偽りではない。もしおそければ待っておれ。それは必ず臨む。滞りはしない。

ハバ 2:4

 見よ、その魂の正しくない者は衰える。しかし義人はその信仰によって生きる。

ハバ 2:5

 また、酒は欺くものだ。高ぶる者は定まりがない。彼の欲は陰府のように広い。彼は死のようであって、飽くことなく、万国をおのれに集め、万民をおのれのものとしてつどわせる」。

ハバ 2:6

 これらは皆ことわざをもって彼をあざけり、あざけりのなぞをもって彼をあざ笑わないだろうか。すなわち言う、「わざわいなるかな、おのれに属さないものを増し加える者よ。いつまでこのようであろうか。質物でおのれを重くする者よ」。

ハバ 2:7

 あなたの負債者は、にわかに興らないであろうか。あなたを激しくゆすぶる者は目ざめないであろうか。その時あなたは彼らにかすめられる。

ハバ 2:8

 あなたは多くの国民をかすめたゆえ、そのもろもろの民の残れる者は皆あなたをかすめる。これは人の血を流し、国と町と、その中に住むすべての者に/暴虐を行ったからである。

ハバ 2:9

 わざわいなるかな、災の手を免れるために高い所に巣を構えようと、おのが家のために不義の利を取る者よ。

ハバ 2:10

 あなたは事をはかって自分の家に恥を招き、多くの民を滅ぼして、自分の生命を失った。

ハバ 2:11

 石は石がきから叫び、梁は建物からこれに答えるからである。

ハバ 2:12

 わざわいなるかな、血をもって町を建て、悪をもって町を築く者よ。

ハバ 2:13

 見よ、もろもろの民は火のために労し、もろもろの国びとはむなしい事のために疲れる。これは万軍の主から出る言葉ではないか。

ハバ 2:14

 海が水でおおわれているように、地は主の栄光の知識で満たされるからである。

ハバ 2:15

 わざわいなるかな、その隣り人に怒りの杯を飲ませて、これを酔わせ、彼らの隠し所を見ようとする者よ。

ハバ 2:16

 あなたは誉の代りに恥に飽き、あなたもまた飲んでよろめけ。主の右の手の杯は、あなたに巡り来る。恥はあなたの誉に代る。

ハバ 2:17

 あなたがレバノンになした暴虐は、あなたを倒し、獣のような滅亡は、あなたを恐れさせる。これは人の血を流し、国と町と、町の中に住むすべての者に、暴虐を行ったからである。

ハバ 2:18

 刻める像、鋳像および偽りを教える者は、その作者がこれを刻んだとてなんの益があろうか。その作者が物言わぬ偶像を造って、その造ったものに頼んでみても、なんの益があろうか。

ハバ 2:19

 わざわいなるかな、木に向かって、さめよと言い、物言わぬ石に向かって、起きよと言う者よ。これは黙示を与え得ようか。見よ、これは金銀をきせたもので、その中には命の息は少しもない。

ハバ 2:20

 しかし、主はその聖なる宮にいます、全地はそのみ前に沈黙せよ。


第3章


ハバ 3:1

 シギヨノテの調べによる、預言者ハバククの祈。

ハバ 3:2

 主よ、わたしはあなたのことを聞きました。主よ、わたしはあなたのみわざを見て恐れます。この年のうちにこれを新たにし、この年のうちにこれを知らせてください。怒る時にもあわれみを思いおこしてください。

ハバ 3:3

 神はテマンからこられ、聖者はパランの山からこられた。その栄光は天をおおい、そのさんびは地に満ちた。〔セラ

ハバ 3:4

 その輝きは光のようであり、その光は彼の手からほとばしる。かしこにその力を隠す。

ハバ 3:5

 疫病はその前に行き、熱病はその後に従う。

ハバ 3:6

 彼は立って、地をはかり、彼は見て、諸国民をおののかせられる。とこしえの山は散らされ、永遠の丘は沈む。彼の道は昔のとおりである。

ハバ 3:7

 わたしが見ると、クシャンの天幕に悩みがあり、ミデアンの国の幕は震う。

ハバ 3:8

 主よ、あなたが馬に乗り、勝利の戦車に乗られる時、あなたは川に向かって怒られるのか。川に向かって憤られるのか。あるいは海に向かって立腹されるのか。

ハバ 3:9

 あなたの弓は取り出された。矢は、弦につがえられた。〔セラ あなたは川をもって地を裂かれた。

ハバ 3:10

 山々はあなたを見て震い、荒れ狂う水は流れいで、淵は声を出して、その手を高くあげた。

ハバ 3:11

 飛び行くあなたの矢の光のために、電光のようにきらめく、あなたのやりのために、日も月もそのすみかに立ち止まった。

ハバ 3:12

 あなたは憤って地を行きめぐり、怒って諸国民を踏みつけられた。

ハバ 3:13

 あなたはあなたの民を救うため、あなたの油そそいだ者を救うために出て行かれた。あなたは悪しき者の頭を砕き、彼を腰から首まで裸にされた。〔セラ 

ハバ 3:14

 あなたはあなたのやりで将軍の首を刺しとおされた。彼らはわたしを散らそうとして、つむじ風のように来、貧しい者をひそかに、のみ滅ぼすことを楽しみとした。

ハバ 3:15

 あなたはあなたの馬を使って、海と大水のさかまくところを踏みつけられた。

ハバ 3:16

 わたしは聞いて、わたしのからだはわななき、わたしのくちびるはその声を聞いて震える。腐れはわたしの骨に入り、わたしの歩みは、わたしの下によろめく。わたしはわれわれに攻め寄せる民の上に/悩みの日の臨むのを静かに待とう。

ハバ 3:17

 いちじくの木は花咲かず、ぶどうの木は実らず、オリブの木の産はむなしくなり、田畑は食物を生ぜず、おりには羊が絶え、牛舎には牛がいなくなる。

ハバ 3:18

 しかし、わたしは主によって楽しみ、わが救の神によって喜ぶ。

ハバ 3:19

 主なる神はわたしの力であって、わたしの足を雌じかの足のようにし、わたしに高い所を歩ませられる。これを琴に合わせ、聖歌隊の指揮者によって歌わせる。