テモテへの第一の手紙(1章~6章)B15



第1章


テモ1 1:1

 わたしたちの救主なる神と、わたしたちの望みであるキリスト・イエスとの任命によるキリスト・イエスの使徒パウロから、

テモ1 1:2

 信仰によるわたしの真実な子テモテへ。父なる神とわたしたちの主キリスト・イエスから、恵みとあわれみと平安とが、あなたにあるように。

テモ1 1:3

 わたしがマケドニヤに向かって出発する際、頼んでおいたように、あなたはエペソにとどまっていて、ある人々に、違った教を説くことをせず、

テモ1 1:4

 作り話やはてしのない系図などに気をとられることもないように、命じなさい。そのようなことは信仰による神の務を果すものではなく、むしろ論議を引き起させるだけのものである。

テモ1 1:5

 わたしのこの命令は、清い心と正しい良心と偽りのない信仰とから出てくる愛を目標としている。

テモ1 1:6

 ある人々はこれらのものからそれて空論に走り、

テモ1 1:7

 律法の教師たることを志していながら、自分の言っていることも主張していることも、わからないでいる。

テモ1 1:8

 わたしたちが知っているとおり、律法なるものは、法に従って用いるなら、良いものである。

テモ1 1:9

 すなわち、律法は正しい人のために定められたのではなく、不法な者と法に服さない者、不信心な者と罪ある者、神聖を汚す者と俗悪な者、父を殺す者と母を殺す者、人を殺す者、

テモ1 1:10

 不品行な者、男色をする者、誘かいする者、偽る者、偽り誓う者、そのほか健全な教にもとることがあれば、そのために定められていることを認むべきである。

テモ1 1:11

 これは、祝福に満ちた神の栄光の福音が示すところであって、わたしはこの福音をゆだねられているのである。

テモ1 1:12

 わたしは、自分を強くして下さったわたしたちの主キリスト・イエスに感謝する。主はわたしを忠実な者と見て、この務に任じて下さったのである。

テモ1 1:13

 わたしは以前には、神をそしる者、迫害する者、不遜な者であった。しかしわたしは、これらの事を、信仰がなかったとき、無知なためにしたのだから、あわれみをこうむったのである。

テモ1 1:14

 その上、わたしたちの主の恵みが、キリスト・イエスにある信仰と愛とに伴い、ますます増し加わってきた。

テモ1 1:15

 「キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世にきて下さった」という言葉は、確実で、そのまま受けいれるに足るものである。わたしは、その罪人のかしらなのである。

テモ1 1:16

 しかし、わたしがあわれみをこうむったのは、キリスト・イエスが、まずわたしに対して限りない寛容を示し、そして、わたしが今後、彼を信じて永遠のいのちを受ける者の模範となるためである。

テモ1 1:17

 世々の支配者、不朽にして見えざる唯一の神に、世々限りなく、ほまれと栄光とがあるように、アァメン。

テモ1 1:18

 わたしの子テモテよ。以前あなたに対してなされた数々の預言の言葉に従って、この命令を与える。あなたは、これらの言葉に励まされて、信仰と正しい良心とを保ちながら、りっぱに戦いぬきなさい。

テモ1 1:19

 ある人々は、正しい良心を捨てたため、信仰の破船に会った。

テモ1 1:20

 その中に、ヒメナオとアレキサンデルとがいる。わたしは、神を汚さないことを学ばせるため、このふたりをサタンの手に渡したのである。


第2章


テモ1 2:1

 そこで、まず第一に勧める。すべての人のために、王たちと上に立っているすべての人々のために、願いと、祈と、とりなしと、感謝とをささげなさい。

テモ1 2:2

 それはわたしたちが、安らかで静かな一生を、真に信心深くまた謹厳に過ごすためである。

テモ1 2:3

 これは、わたしたちの救主である神のみまえに良いことであり、また、みこころにかなうことである。

テモ1 2:4

 神は、すべての人が救われて、真理を悟るに至ることを望んでおられる。

テモ1 2:5

 神は唯一であり、神と人との間の仲保者もただひとりであって、それは人なるキリスト・イエスである。

テモ1 2:6

 彼は、すべての人のあがないとしてご自身をささげられたが、それは、定められた時になされたあかしにほかならない。

テモ1 2:7

 そのために、わたしは立てられて宣教者、使徒となり(わたしは真実を言っている、偽ってはいない)、また異邦人に信仰と真理とを教える教師となったのである。

テモ1 2:8

 男は、怒ったり争ったりしないで、どんな場所でも、きよい手をあげて祈ってほしい。

テモ1 2:9

 また、女はつつましい身なりをし、適度に慎み深く身を飾るべきであって、髪を編んだり、金や真珠をつけたり、高価な着物を着たりしてはいけない。

テモ1 2:10

 むしろ、良いわざをもって飾りとすることが、信仰を言いあらわしている女に似つかわしい。

テモ1 2:11

 女は静かにしていて、万事につけ従順に教を学ぶがよい。

テモ1 2:12

 女が教えたり、男の上に立ったりすることを、わたしは許さない。むしろ、静かにしているべきである。

テモ1 2:13

 なぜなら、アダムがさきに造られ、それからエバが造られたからである。

テモ1 2:14

 またアダムは惑わされなかったが、女は惑わされて、あやまちを犯した。

テモ1 2:15

 しかし、女が慎み深く、信仰と愛と清さとを持ち続けるなら、子を産むことによって救われるであろう。


第3章


テモ1 3:1

 「もし人が監督の職を望むなら、それは良い仕事を願うことである」とは正しい言葉である。

テモ1 3:2

 さて、監督は、非難のない人で、ひとりの妻の夫であり、自らを制し、慎み深く、礼儀正しく、旅人をもてなし、よく教えることができ、

テモ1 3:3

 酒を好まず、乱暴でなく、寛容であって、人と争わず、金に淡泊で、

テモ1 3:4

 自分の家をよく治め、謹厳であって、子供たちを従順な者に育てている人でなければならない。

テモ1 3:5

 自分の家を治めることも心得ていない人が、どうして神の教会を預かることができようか。

テモ1 3:6

 彼はまた、信者になって間もないものであってはならない。そうであると、高慢になって、悪魔と同じ審判を受けるかも知れない。

テモ1 3:7

 さらにまた、教会外の人々にもよく思われている人でなければならない。そうでないと、そしりを受け、悪魔のわなにかかるであろう。

テモ1 3:8

 それと同様に、執事も謹厳であって、二枚舌を使わず、大酒を飲まず、利をむさぼらず、

テモ1 3:9

 きよい良心をもって、信仰の奥義を保っていなければならない。

テモ1 3:10

 彼らはまず調べられて、不都合なことがなかったなら、それから執事の職につかすべきである。

テモ1 3:11

 女たちも、同様に謹厳で、他人をそしらず、自らを制し、すべてのことに忠実でなければならない。

テモ1 3:12

 執事はひとりの妻の夫であって、子供と自分の家とをよく治める者でなければならない。

テモ1 3:13

 執事の職をよくつとめた者は、良い地位を得、さらにキリスト・イエスを信じる信仰による、大いなる確信を得るであろう。

テモ1 3:14

 わたしは、あなたの所にすぐ行きたいと望みながら、この手紙を書いている。

テモ1 3:15

 万一わたしが遅れる場合には、神の家でいかに生活すべきかを、あなたに知ってもらいたいからである。神の家というのは、生ける神の教会のことであって、それは真理の柱、真理の基礎なのである。

テモ1 3:16

 確かに偉大なのは、この信心の奥義である、/「キリストは肉において現れ、/霊において義とせられ、/御使たちに見られ、/諸国民の間に伝えられ、/世界の中で信じられ、/栄光のうちに天に上げられた」。


第4章


テモ1 4:1

 しかし、御霊は明らかに告げて言う。後の時になると、ある人々は、惑わす霊と悪霊の教とに気をとられて、信仰から離れ去るであろう。

テモ1 4:2

 それは、良心に焼き印をおされている偽り者の偽善のしわざである。

テモ1 4:3

 これらの偽り者どもは、結婚を禁じたり、食物を断つことを命じたりする。しかし食物は、信仰があり真理を認める者が、感謝して受けるようにと、神の造られたものである。

テモ1 4:4

 神の造られたものは、みな良いものであって、感謝して受けるなら、何ひとつ捨てるべきものはない。

テモ1 4:5

 それらは、神の言と祈とによって、きよめられるからである。

テモ1 4:6

 これらのことを兄弟たちに教えるなら、あなたは、信仰の言葉とあなたの従ってきた良い教の言葉とに養われて、キリスト・イエスのよい奉仕者になるであろう。

テモ1 4:7

 しかし、俗悪で愚にもつかない作り話は避けなさい。信心のために自分を訓練しなさい。

テモ1 4:8

 からだの訓練は少しは益するところがあるが、信心は、今のいのちと後の世のいのちとが約束されてあるので、万事に益となる。

テモ1 4:9

 これは確実で、そのまま受けいれるに足る言葉である。

テモ1 4:10

 わたしたちは、このために労し苦しんでいる。それは、すべての人の救主、特に信じる者たちの救主なる生ける神に、望みを置いてきたからである。

テモ1 4:11

 これらの事を命じ、また教えなさい。

テモ1 4:12

 あなたは、年が若いために人に軽んじられてはならない。むしろ、言葉にも、行状にも、愛にも、信仰にも、純潔にも、信者の模範になりなさい。

テモ1 4:13

 わたしがそちらに行く時まで、聖書を朗読することと、勧めをすることと、教えることとに心を用いなさい。

テモ1 4:14

 長老の按手を受けた時、預言によってあなたに与えられて内に持っている恵みの賜物を、軽視してはならない。

テモ1 4:15

 すべての事にあなたの進歩があらわれるため、これらの事を実行し、それを励みなさい。

テモ1 4:16

 自分のことと教のこととに気をつけ、それらを常に努めなさい。そうすれば、あなたは、自分自身とあなたの教を聞く者たちとを、救うことになる。


第5章


テモ1 5:1

 老人をとがめてはいけない。むしろ父親に対するように、話してあげなさい。若い男には兄弟に対するように、

テモ1 5:2

 年とった女には母親に対するように、若い女には、真に純潔な思いをもって、姉妹に対するように、勧告しなさい。

テモ1 5:3

 やもめについては、真にたよりのないやもめたちを、よくしてあげなさい。

テモ1 5:4

 やもめに子か孫かがある場合には、これらの者に、まず自分の家で孝養をつくし、親の恩に報いることを学ばせるべきである。それが、神のみこころにかなうことなのである。

テモ1 5:5

 真にたよりのない、ひとり暮しのやもめは、望みを神において、日夜、たえず願いと祈とに専心するが、

テモ1 5:6

 これに反して、みだらな生活をしているやもめは、生けるしかばねにすぎない。

テモ1 5:7

 これらのことを命じて、彼女たちを非難のない者としなさい。

テモ1 5:8

 もしある人が、その親族を、ことに自分の家族をかえりみない場合には、その信仰を捨てたことになるのであって、不信者以上にわるい。

テモ1 5:9

 やもめとして登録さるべき者は、六十歳以下のものではなくて、ひとりの夫の妻であった者、

テモ1 5:10

 また子女をよく養育し、旅人をもてなし、聖徒の足を洗い、困っている人を助け、種々の善行に努めるなど、そのよいわざでひろく認められている者でなければならない。

テモ1 5:11

 若いやもめは除外すべきである。彼女たちがキリストにそむいて気ままになると、結婚をしたがるようになり、

テモ1 5:12

 初めの誓いを無視したという非難を受けねばならないからである。

テモ1 5:13

 その上、彼女たちはなまけていて、家々を遊び歩くことをおぼえ、なまけるばかりか、むだごとをしゃべって、いたずらに動きまわり、口にしてはならないことを言う。

テモ1 5:14

 そういうわけだから、若いやもめは結婚して子を産み、家をおさめ、そして、反対者にそしられるすきを作らないようにしてほしい。

テモ1 5:15

 彼女たちのうちには、サタンのあとを追って道を踏みはずした者もある。

テモ1 5:16

 女の信者が家にやもめを持っている場合には、自分でそのやもめの世話をしてあげなさい。教会のやっかいになってはいけない。教会は、真にたよりのないやもめの世話をしなければならない。

テモ1 5:17

 よい指導をしている長老、特に宣教と教とのために労している長老は、二倍の尊敬を受けるにふさわしい者である。

テモ1 5:18

 聖書は、「穀物をこなしている牛に、くつこをかけてはならない」また「働き人がその報酬を受けるのは当然である」と言っている。

テモ1 5:19

 長老に対する訴訟は、ふたりか三人の証人がない場合には、受理してはならない。

テモ1 5:20

 罪を犯した者に対しては、ほかの人々も恐れをいだくに至るために、すべての人の前でその罪をとがむべきである。

テモ1 5:21

 わたしは、神とキリスト・イエスと選ばれた御使たちとの前で、おごそかにあなたに命じる。これらのことを偏見なしに守り、何事についても、不公平な仕方をしてはならない。

テモ1 5:22

 軽々しく人に手をおいてはならない。また、ほかの人の罪に加わってはいけない。自分をきよく守りなさい。

テモ1 5:23

 (これからは、水ばかりを飲まないで、胃のため、また、たびたびのいたみを和らげるために、少量のぶどう酒を用いなさい。)

テモ1 5:24

 ある人の罪は明白であって、すぐ裁判にかけられるが、ほかの人の罪は、あとになってわかって来る。

テモ1 5:25

 それと同じく、良いわざもすぐ明らかになり、そうならない場合でも、隠れていることはあり得ない。


第6章


テモ1 6:1

 くびきの下にある奴隷はすべて、自分の主人を、真に尊敬すべき者として仰ぐべきである。それは、神の御名と教とが、そしりを受けないためである。

テモ1 6:2

 信者である主人を持っている者たちは、その主人が兄弟であるというので軽視してはならない。むしろ、ますます励んで仕えるべきである。その益を受ける主人は、信者であり愛されている人だからである。あなたは、これらの事を教えかつ勧めなさい。

テモ1 6:3

 もし違ったことを教えて、わたしたちの主イエス・キリストの健全な言葉、ならびに信心にかなう教に同意しないような者があれば、

テモ1 6:4

 彼は高慢であって、何も知らず、ただ論議と言葉の争いとに病みついている者である。そこから、ねたみ、争い、そしり、さいぎの心が生じ、

テモ1 6:5

 また知性が腐って、真理にそむき、信心を利得と心得る者どもの間に、はてしのないいがみ合いが起るのである。

テモ1 6:6

 しかし、信心があって足ることを知るのは、大きな利得である。

テモ1 6:7

 わたしたちは、何ひとつ持たないでこの世にきた。また、何ひとつ持たないでこの世を去って行く。

テモ1 6:8

 ただ衣食があれば、それで足れりとすべきである。

テモ1 6:9

 富むことを願い求める者は、誘惑と、わなとに陥り、また、人を滅びと破壊とに沈ませる、無分別な恐ろしいさまざまの情欲に陷るのである。

テモ1 6:10

 金銭を愛することは、すべての悪の根である。ある人々は欲ばって金銭を求めたため、信仰から迷い出て、多くの苦痛をもって自分自身を刺しとおした。

テモ1 6:11

 しかし、神の人よ。あなたはこれらの事を避けなさい。そして、義と信心と信仰と愛と忍耐と柔和とを追い求めなさい。

テモ1 6:12

 信仰の戦いをりっぱに戦いぬいて、永遠のいのちを獲得しなさい。あなたは、そのために召され、多くの証人の前で、りっぱなあかしをしたのである。

テモ1 6:13

 わたしはすべてのものを生かして下さる神のみまえと、またポンテオ・ピラトの面前でりっぱなあかしをなさったキリスト・イエスのみまえで、あなたに命じる。

テモ1 6:14

 わたしたちの主イエス・キリストの出現まで、その戒めを汚すことがなく、また、それを非難のないように守りなさい。

テモ1 6:15

 時がくれば、祝福に満ちた、ただひとりの力あるかた、もろもろの王の王、もろもろの主の主が、キリストを出現させて下さるであろう。

テモ1 6:16

 神はただひとり不死を保ち、近づきがたい光の中に住み、人間の中でだれも見た者がなく、見ることもできないかたである。ほまれと永遠の支配とが、神にあるように、アァメン。

テモ1 6:17

 この世で富んでいる者たちに、命じなさい。高慢にならず、たよりにならない富に望みをおかず、むしろ、わたしたちにすべての物を豊かに備えて楽しませて下さる神に、のぞみをおくように、

テモ1 6:18

 また、良い行いをし、良いわざに富み、惜しみなく施し、人に分け与えることを喜び、

テモ1 6:19

 こうして、真のいのちを得るために、未来に備えてよい土台を自分のために築き上げるように、命じなさい。

テモ1 6:20

 テモテよ。あなたにゆだねられていることを守りなさい。そして、俗悪なむだ話と、偽りの「知識」による反対論とを避けなさい。

テモ1 6:21

 ある人々はそれに熱中して、信仰からそれてしまったのである。恵みが、あなたがたと共にあるように。